2025年12月9日、霞ヶ関の霞山会館で開催された、日本最大級の学生ビジネスコンテスト「第22回キャンパスベンチャーグランプリ(CVG)東京大会」ファイナル審査会にて、経営学部・伊藤智久教授ゼミから2チームが出場。チーム「CLUB AILE」(代表者:酒井陽飛さん 経営学部3年)は奨励賞、チーム「Node」(代表者:矢島寛大さん 経営学部3年)がりそな銀行賞を受賞しました。
CVGは1999年大阪発の、学生起業家の登竜門とされる歴史あるビジネスコンテストです。現在、全国8地域で企業や公的組織の協力を得て地域大会を開催しており、東京大会は第22回目を迎え、11都県の学生が参加する最大規模の大会です。今年度は71件の応募があり、その中から選ばれたファイナリスト11組が大賞を目指して挑戦しました。同一大学の同一ゼミから複数チームがファイナルに進出すること自体が極めて珍しく、今回の出場は異例の快挙です。
緊張感の中で見せた、2チームの堂々とした姿
ファイナル審査会の会場となった霞山会館は、霞が関コモンゲート最上階の37階に位置する、とても豪華な会場。審査員が目の前に並ぶ緊張感あふれる環境の中、両チームとも堂々とプレゼンテーションを行っていました。
同じゼミで普段から共に学ぶ仲間でもあることから、審査会前にはお互いを励まし合う姿も見られ、良い緊張感と連帯感の中で本番を迎えた様子が印象的でした。
ファイナル審査会で発表された、両チームの事業概要については以下のとおりです。
奨励賞:チーム「CLUB AILE」(代表者:酒井陽飛さん)
<事業概要>
「CLUB AILE」では、eスポーツを活用して不登校生徒の孤立を防ぐことを目的とし、学校や家庭以外に新しいコミュニケーションの場となる「第三の居場所」を創り出した。eスポーツの技術向上、不登校生徒と登校生徒との垣根を超えたコミュニティ、プロeスポーツ選手との交流機会—以上の三つを価値として掲げている。オンラインコミュニケーションツールを活用することで、誰もが気軽に参加できる環境を整え、地域や学校の枠を超えた交流を促進する。将来的には地域連携を強化し、より多くの子どもたちに安心できる居場所を届けることを目指す。
りそな銀行賞:チーム「Node」(代表者:矢島寛大さん)
<事業概要>
大学1年生からキャリア形成を考えられる機会を提供し、中小企業の認知度を高めることで、企業と学生が“共感”でつながる世界を目指して、マッチングサービス「empath」を創案した。Instagramのようにハッシュタグを活用し、価値観を登録することで、関連性の高い企業と学生をつなぐ仕組みとなっている。ポイントは「匿名性」と「共感」の二つ。匿名性を活かすことで従来の就職情報に縛られず、ランダムな出会いを生み出し、価値観を軸にしたマッチングが企業と学生を“心でつなぐ”。さらに、企業の理念や価値観に触れることで、学生が共感を持てる出会いを創出する。
挑戦の裏側にあった、それぞれの思い
ファイナル審査会を終えた直後、代表者の2名からは、やり切ったという率直な達成感が聞かれました。「CLUB AILE」の代表・酒井陽飛さんは、「これまでの学生生活の中で一番刺激的な経験でした」と振り返り、1から事業を構想し、長期間にわたって向き合ってきた今回の挑戦を「大きな財産になる経験だった」と語ります。一方、「Node」の代表・矢島寛大さんも、「大賞には届かなかったものの、この経験は自分の自信になり、大きな成長の一歩だと感じています」と、率直な思いを口にしました。
印象に残った審査員の方からのフィードバックとして、酒井さんは「自分たちがどんな課題を解決したいのかを、十分に伝え切れていなかった点」を挙げます。事業の目的や方向性をより明確に示す必要性を実感したといいます。矢島さんは、「とにかくまずは挑戦すること」という言葉が心に残ったと話し、小規模でも実際に動くことで、事業を磨いていく重要性を改めて意識するようになったと振り返りました。
また、2人とも口をそろえて、チームメンバーや指導教員、支援者への感謝を述べています。酒井さんは、「誰か一人が引っ張るのではなく、全員がそれぞれの強みを生かして支え合えたことが大きかった」と振り返り、矢島さんも「未熟なリーダーだった自分と最後まで一緒に戦ってくれたメンバーに、心から感謝しています」と語りました。
今回の挑戦を経て、2人はそろって起業という将来像を見据えています。酒井さんは、まず企業で事業づくりの経験を積んだ上での起業を思い描き、矢島さんは、このゼミでの学びを必ず生かし、起業というキャリアに挑戦していきたいと語りました。それぞれに描く道筋は異なるものの、CVGで事業づくりに本気で向き合った経験は、2人にとって起業を「将来の可能性」ではなく、本気で向き合う進路として意識するきっかけになったようです。
高まる学生の起業意欲
表彰式の中で、実行委員会を代表してあいさつした経済産業省関東経済産業局長・佐合達矢氏によると、2024年度の調査では大学発ベンチャーは5074社に達し、2023年度の4,288社から786社増加。そのうち約6割が地方発であり、大学生の起業意欲は「大変深まっている状況」と述べています。審査委員長を務めた開志専門職大学学長・東京大学特命教授・各務茂夫氏は、「ファイナリストとしてこの場にいること自体が素晴らしい成果」と述べ、すべてのチームに祝意を表しました。
本学の2チームをはじめ、どのチームの発表からも、社会課題をどのように解決するのか、どのような新規性を持たせているのか、そして他者が容易に模倣できない独自性をどう確保するのかといった、多様な視点が盛り込まれていました。とりわけ印象的だったのは、取り組む課題に対して「自ら考えた事業で必ず解決したい」という強い思いが込められた発表は、聞き手を引き込む力を持っていたことです。
一方で、ビジネスとして実現し継続していくためには、収益性の確保という視点が欠かせません。強い信念だけでは事業は成立せず、持続可能な仕組みをどう構築するかが問われる——その現実が浮かび上がる点も、ビジネスコンテストならではの奥深さだと感じました。
改めて、ファイナルに進出した2チームに敬意を表しますとともに、これからのさらなる活躍を期待しています。そして来年度もまた、この舞台に後輩たちが挑戦してくれることを願っています。