子どもたちの多様性を尊重し、一人ひとりの教育的ニーズに応じた支援や指導を行うことが、教育現場ではますます重要になっています。
そうした子どもとの関わり方を実践的に学ぶ機会として、8月30日、明星大学体育館で「夏休みSST教室ー明星運動会2026」が行われました。当日は、教育学部のさまざまなコースから学生40人が参加。小学生・中学生・特別支援学校高等部の生徒など16人とともに、運動会形式のSSTゲームを通して、チームでさまざまな活動に取り組みました。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
人との関わりの中で、自分と相手の双方を尊重しながら、よりよい人間関係を築くために必要な技能(ソーシャルスキル)を身につけるためのトレーニング。特別支援学校や特別支援学級、通級指導教室などでも取り入れられている。
子どもたちとの関わりを実践的に学ぶ—実施背景
「夏休みSST教室」は、教育学部の学生が子どもたちと実際に関わりながら、一人ひとりの特性や状況に応じた支援や関わり方について学ぶことを目的に企画されました。
今回は、関係する教育委員会や学校などを通じて参加を呼びかけ、さまざまな特性や背景をもつ子どもたちが参加しました。
学生にとっては、活動の計画や運営に携わるとともに、子どもたちや保護者との交流を通して、障害への理解を深める実践的な学びの機会となります。一方、子どもたちにとっても、大学生との交流やグループ活動を通して、普段の学校生活とは異なる環境で人と関わり、新たな経験を重ねることを目指しています。
運動会形式のSSTゲームに挑戦—当日の様子
当日は、子どもたちと学生が6つのチームに分かれ、自己紹介やフラフープくぐりなどのチームビルドを行った後、「コロコロゴルフ」「木の実(宝)運びゲーム」「サイコロ玉入れ」「スポーツリバーシ」「じゃんけんリレー」の5つの競技に取り組みました。
これらの競技の特徴は、体を動かすだけではなく、子どもたちが自分で考えたり、仲間に伝えたり、協力したりする場面が随所に取り入れられていることです。例えば、「木の実(宝)運びゲーム」では、競技の前に作戦会議を行い、子どもたちも一緒になってボールをどう運ぶか、相手をどう阻止するかを考えました。「スポーツリバーシ」では、ペアやチームで話し合いながら、相手の動きを見て自分たちがどう動くかを考えて競技に取り組みました。
また、競技は一度行って終わりではなく、途中に作戦会議の時間を設定。子どもたちが自分で考え、仲間に伝え、一緒に試してみる機会をつくりながら、学生もそれぞれの様子に合わせて活動をサポートしました。「次はこうしてみよう」と考えて再び挑戦することで、子どもたちがより活動に集中して取り組む様子も見られました。
参加した子どもたちからは、「大学生と話せたことが楽しかった」「みんなで協力できた」「たくさんの人とゲームをしたり、一緒にお昼ごはんを食べたりできて楽しかった」「いろいろなスポーツに挑戦できた」などの感想が寄せられました。また、保護者からも、ルールをすべて理解できなくても楽しい雰囲気の中で活動できていたことや、学生にとっても子どもたちとの関わりが貴重な経験になっていると感じた、との声が寄せられています。
実践を通して深まる学生たちの学び
参加した学生のアンケート結果を見ると、40人全員が活動に「満足した」と回答。また、全員が今回の経験について「教師になる上で役立つ」と回答しました。
活動を通して学んだこととして最も多く挙げられたのは、「子どもの『できた』経験を認めること」で28人(70%)。次いで、「分かりやすく伝える・見本を示すこと」が21人(52.5%)、「子どもが考える時間をとること」が16人(40%)となりました。
今回の活動を通して得られた学びについて、実際に企画・運営に携わった学生は、次のように振り返ります。
子どもたちの笑顔から学んだこと —教育学部教育学科 教科専門(国語)コース3年 内田龍也さん
今回の教室で企画・運営に携わった内田龍也さんは、これまでのように子どもたちと一緒に活動する立場ではなく、運営側として準備から当日まで関わりました。
「競技の内容も、学生同士で何度も話し合いながら考えました。自分たちが準備してきたものを子どもたちが楽しんでくれて、笑顔を見られたことが本当に嬉しかったです」と振り返ります。
特に印象に残っているのは、普段は運動があまり好きではないという子どもが、活動を終えた後に「楽しかった」と話してくれたことです。内田さんは、学生たちが協力して場を盛り上げたことも、子どもたちが楽しめた理由の一つではないかと感じています。
「競技の内容だけではなく、みんなが楽しく参加できる雰囲気をつくることが、本当に大切なんだと感じました」。子どもたちの反応を通して、活動の内容やルールを工夫することに加え、誰もが参加しやすい環境を整えることの重要性にも気づいたといいます。
また、今回の活動では、大学の授業で学んだ「ポジティブフィードバック」も意識しました。できなかったことを指摘するのではなく、できたことを認め、肯定的な言葉をかけるという関わり方です。
「『ここをこうした方がいい』ではなく、『ここができていていいね』と、できたことを褒めるようにしました」。授業で学んだ知識を実際の子どもたちとの関わりの中で生かす経験にもなりました。
中学校の教員を目指す内田さんは、大学1年生の授業をきっかけに、特別支援教育についても学んでいます。その背景にあるのは、子どもの特性を十分に理解しないまま、善意から無理な努力を求めてしまう教員にはなりたくないという思いです。
「子どもたちの夢の実現を全力で支援できる教員になりたいと思っています。そのためにも、一人ひとりのことをきちんと理解できるようになりたいです」。今回の活動を通して、子どもたちと関わる教員という仕事への思いを改めて強くしたといいます。
最後に内田さんは、「来年は、参加する子どもたちも、運営に関わる学生も、もっと増えたら嬉しいです」と、今後の活動への期待を語りました。
子どもたちとの関わりを、学生自身の学びへー教育学部島田博祐教授
今回の企画を中心となって進めた教育学部の島田博祐教授は、本企画で期待される効果として、次の3点を挙げています。
- 活動の計画や運営を通じて、学生同士の相互連携や、将来の社会人として必要となる企画運営力を高める
- 学生との交流やグループ活動を通して、参加した子どもたちが普段の学校生活とは異なる場で肯定的な経験を得る機会をつくる
- 親の会との連携や放課後・学外支援とのつながりを通して、大学と地域をつなぐ交流の場としての役割を果たす
※島田教授提供資料より引用
こうした効果を踏まえ、島田教授は今回の活動の意義について、次のように語ります。
「教科指導については、学内でも模擬授業などを通じて疑似的に体験する機会がありますが、運動会などの特別活動を経験する機会はありません。今回の活動では、企画・運営にとどまらず、参加した子どもたちへの適切な声掛けや指導の仕方を実地で学ぶことができました。この経験は、将来の教職実践に確実に生かせると考えています。また、学生が企画した運動系のソーシャルスキルゲームを通じて、子どもたちがルールやマナー、協力することの大切さを楽しみながら学ぶ機会にもなりました。こうした経験が、大学と地域をつなぐ社会貢献活動としての意義をさらに深めたと考えています」