「学生同士で協力して一つのものをつくることも、大きな学びに」
今回参加した学生の一人、教育学部3年の七海さんに話を聞くと、まず印象に残ったこととして、さやか星小学校で実践されている教育そのものを挙げてくれました。
七海さんは特別支援教育を学ぶ中で、以前からインクルーシブな教育に関心を持っていました。さやか星小学校についても、行動分析学を取り入れた教育を実践していることは事前に聞いていたものの、「実際にどこまで実現されているのか、自分の目で見てみたいと思っていました」と話します。
「話には聞いていましたが、実際に学校に行って、子どもたちへの関わり方や学校独自の取り組みを見ることができたのは、すごく勉強になりました」
そして、もう一つ印象に残ったのが、自分たちが準備してきた授業に対する子どもたちの反応です。
学生たちは夏休みから集まり、子どもたちが活動に興味を持てるよう、寸劇や映像、模擬ファッションショーなどを準備しました。七海さんは、本番を迎えるまで「子どもたちが食いついてくれるかな、とすごくドキドキしていました」と振り返ります。その不安が手応えに変わったのが、活動冒頭の寸劇や模擬ファッションショーでした。
「劇が始まると、子どもたちからいろいろな反応が返ってきました。特に、学生が作った洋服を着て音楽に合わせて登場したとき、子どもたちがニコニコしながら振り返って、目がキラキラしているように見えたんです。準備してきたものが形になって、子どもたちにも楽しんでもらえたことに、すごくやりがいを感じました」
今回の活動を通して、七海さんが改めて実感したのが、教材研究や授業づくりにおける準備の重要性です。子どもたちの興味を引く方法だけでなく、安全に活動するための道具の配置や教室環境についても検討。現地に入ってからも、前日の夜までリハーサルを重ねました。
「佐々木先生から『準備が9割5分』と言われていました。実際に自分たちで準備をして授業をやってみて、授業における準備の大切さを身をもって実感しました」
一方、実際に子どもたちを前にして初めて得られた学びもありました。七海さんが挙げたのが、初めて会う子どもたちとのコミュニケーションです。
「その日に初めて会った子どもたちとコミュニケーションを取りながら、その子が何に興味を持っているのか、何にワクワクしているのかを引き出して、それを作品として形にしていく。声のかけ方やコミュニケーションの取り方は、すごく勉強になりました」
さらに、子どもたちとの関わりだけでなく、学生同士の連携についても気づきがあったといいます。寸劇や映像の制作をはじめ、準備の段階から学生同士で集まり、一つの授業をつくり上げました。
「全員が同じ方向を向いていないと実現できないと思いました。子どもたちとのコミュニケーションだけでなく、学生同士で協力して一つのものをつくることも、大きな学びになりました」
将来は小学校教員を目指している七海さん。今回経験した教材研究や環境づくり、授業に向けた準備、子どもたちとの関わり、そして仲間と協力して授業をつくる経験は、将来の教員生活にもつながっていくと考えています。
「今回の活動で学んだことを、これからさらに深めて、将来教員になったときに生かしていきたいです」と今後の抱負を語ってくれました。
「学生が主体となって授業をつくる経験に価値がある」—佐々木敏幸准教授
今回のプロジェクトについて、教育学部教育学科の佐々木敏幸准教授は、学生たちに現場でしか得られない学びを経験してほしかったと、その目的を語ります。
「現場に行って見学するだけではなく、今回は学生自身がワークショップのファシリテーターを務めました。学校の教育課程の中で行われる授業に入り、授業をつくる側として関わる。そこに大きな意味があると考えました」
学生たちは見学者としてではなく、さやか星小学校の教育課程の一部に実践者として参加しました。子どもたちに課外活動や遊びを提供するのではなく、学校の授業として行われる活動を担うため、学生にも相応の責任が求められます。
「単に学校を見学したり、子どもたちと遊んだりする活動ではありません。年間の教育課程に位置付けられた授業の一部を担う以上、中途半端なことはできない。そのことは、学生たちも実際に現場に立つ中で感じ取っていきました」
活動に向けては、学生だけで準備を進めるのではなく、さやか星小学校の教員と意見を交わしながら、内容や進行を検討しました。学生側の提案に対して、子どもたちの発達段階や各学級の方針を踏まえた意見が寄せられ、内容を見直す場面もあったといいます。
「さやか星小学校の先生方も、学生と一緒になって授業をつくってくださいました。こちらが用意したものについて率直な意見をいただいたこともあります。学生たちは、そうしたやり取りを通して、その学校が何を大切にしているのか、学級や子どもたちに応じて授業をどう考えるのかを学ぶことができたと思います」
こうした経験について、佐々木准教授は、「今回は、私たちが授業の内容を提案する側でもありました。そのため、学校の先生方と対等に意見を交わし、安全管理も含めて一緒に考えなければなりません。自分たちの考えだけで進めるのではなく、一つの方針の中で周囲と合わせながら、主体的に授業を進めていく。その経験は、学生にとって貴重だったと思います」と話します。
学生たちは、導入映像や寸劇の制作、模擬ファッションショー、教材の準備、当日の進行まで、それぞれの役割を担いました。佐々木敏幸准教授は全体の構成や環境を整えながら、当日は学生が中心となって活動を進めることを重視しました。
「当日は、私はほとんど裏方に回り、学生たちが活動を動かしました。学生が一人も傍観者にならないよう、それぞれに役割を持ってもらいました。出発から活動を終えて帰るまで、自分たちが授業を担っているという感覚があったのではないかと思います」
『準備が9割5分』
活動の中で、繰り返し伝えてきたのが、授業づくりにおける準備の重要性でした。
「私は学生たちに『準備が9割5分』と伝えています。事前の打ち合わせやリハーサルは、一度でも多く行えば、それだけ授業は良い方向に進みます。活動の始まりと終わりを明確にし、子どもたちが見通しを持てるようにすることも必要です。教材だけでなく、環境や進行まで考えることが授業づくりだと、実際の経験を通して理解してもらえたと思います」
準備と実践を重ねる中で、学生たちの姿にも変化が見られました。前日のリハーサルでは実際の流れや動きを確認し、それぞれの役割を整理したことで、当日は多くの子どもたちを前にしても、落ち着いて活動を進めることができたといいます。
「現場で子どもたちや先生方と関わり、一つの授業をつくり上げていく中で、学生たちの目の色が変わっていきました。普段とは違う姿を見せた学生もいます。役割や見せ場があれば、しっかりと応えてくれる。そうした学生たちの姿を見ることができたことにも、この活動を行った意味があったと感じています」
そして、佐々木敏幸准教授が何よりも大切にしていたのは、子どもたちの反応を学生自身が目の前で受け取ることでした。
「授業の結果は、子どもたちの表情や行動に表れます。子どもたちが生き生きと活動する姿を見て、最後にみんなで『やってよかった』と思える。それは、教員として仕事をしていく上での醍醐味であり、学生たちにも体験してほしかったことです」
さやか星小学校の教育課程の一部を担い、子どもたちや教員とともに授業をつくり上げる。今回のプロジェクトは、学生たちにとって教員という仕事の責任と魅力を実感する機会となりました。