デザイン学部 本間由佳准教授のゼミでは、立川市と連携し、路上喫煙防止や喫煙マナー向上を呼びかける啓発デザインを制作しました。制作された広報物は現在、立川駅周辺に掲示され、まちを行き交う人々に「歩きタバコ&ポイ捨て禁止」を呼びかけています。
掲示物に描かれているのは、犬と猿のキャラクター。犬の横には「あるいてすわん」、猿の横には「ここにすてさるな」という言葉が添えられています。
一見すると、親しみやすいキャラクターと言葉遊びを組み合わせた啓発デザイン。しかし、この犬と猿の組み合わせには、実はもうひとつの意味が込められています。実際に掲示されている様子とともに、そのメッセージを紹介します。
行政課題と向き合う「公共デザイン」
今回の取り組みは、立川市環境政策課との連携のもと、2025年度の本間ゼミの活動および卒業研究の一環として行われました。学生たちは、立川市が取り組む喫煙マナー向上や環境施策について、市民に分かりやすく、親しみをもって伝えるためのビジュアル表現の検討・制作に取り組みました。
路上喫煙や歩きタバコ、ポイ捨ての防止は、多くの自治体が取り組む身近な課題のひとつです。一方で、公共空間に掲示される注意喚起は、「禁止」や「注意」といったメッセージが中心となり、日常の風景の中に埋もれてしまうことも少なくありません。
そこで本間ゼミの学生たちが目指したのは、「伝える」だけではなく、「見てもらう」ことから始まるコミュニケーションです。
子どもから大人まで直感的に理解できる親しみやすさと、公共空間の中でも目に留まる視認性。その両立を目指しながら、犬や猿のキャラクターを用いた啓発デザインが生まれました。
制作された広報物は現在、立川駅周辺の掲示物として実際に活用されており、学生たちが手掛けたデザインが、日常の風景の一部としてまちの中に溶け込んでいます。
犬と猿に込められた、もうひとつの意味
「あるいてすわん」「ここにすてさるな」。
今回のデザインでは、犬や猿のキャラクターと掛け合わせた言葉遊びによって、喫煙マナーを親しみやすく伝える工夫が施されています。
そして実は、犬と猿という組み合わせそのものにも、もうひとつの意味が込められています。
仲の悪い関係を表す慣用句として知られる「犬猿の仲」。
今回のデザインでは、この「犬猿」と「嫌煙」を掛け合わせることで、受動喫煙や喫煙マナーについて考えるきっかけを生み出そうとしています。
「嫌煙」という言葉は、字面だけを見ると少し強い印象を受けるかもしれません。しかし実際には、1970年代後半から「受動喫煙を避け、きれいな空気を吸う権利」をめぐる社会的な議論の中で使われてきた言葉です。
今回のデザインは、喫煙者と非喫煙者の対立を強調するものではありません。
「犬猿の仲」という慣用句と「嫌煙」という言葉を重ねることで、喫煙マナーや受動喫煙について、少し立ち止まって考えてもらうきっかけをつくるものです。
制作された広報物は現在、立川駅周辺の掲示物として実際に活用されており、学生たちが手掛けたデザインが、日常の風景の一部としてまちの中に溶け込んでいます。
このデザインは、2026年3月26日に行われた本学と立川市との包括連携協定締結式後の懇談でも話題となりました。懇談の中で、酒井大史市長からも、本学との連携事業の一例として「非常にユニークなデザイン」と紹介されました。
「デザインが社会とつながる貴重な学びに」— 本間由佳准教授コメント
今回の取り組みについて、本間由佳准教授は以下のようにコメントしています。
「デザイン学部では、大学内での学びにとどまらず、社会の課題を発見・解決する「社会とつながるデザイン」の実践を大切にしています。
今回の立川市との取り組みでも、公共マナーという正解のない課題に対し、学生たちが「企画」と「表現」を重ねながら、一方的な禁止ではなく親しみを持って受け取ってもらえる形を探求しました。「犬猿」と「嫌煙」を掛け合わせたアイデアは、学生ならではの柔軟な視点とユーモアが活きた提案です。
自分たちのデザインが街に実装され、社会の中で実際に機能している経験は、学生にとって大きな財産です。今後も地域との協働を通じ、実践的に成長できる学びの場をつくっていきたいと考えています。」