2026年7月9日、大学院経済学研究科のFDオープンセミナーが開催され、税理士法人あおば代表社員の角田孝哉さんが「税理士法人の業務と経営」をテーマに講演しました。
角田さんは、明星大学経済学部を卒業後、大学院経済学研究科を修了した本学の卒業生です。現在は税理士法人あおばの代表社員として活躍しており、講演では税理士業務の内容や業界の現状、自身のキャリアについて語りました。
講演の中で角田さんは、「正しい会計データに基づいた経営の推進」や、「税金で悩む人を一人でも少なくしたい」という思いについても紹介しました。税務や会計の専門知識を通じて企業経営を支える税理士の役割や、その仕事の魅力について、実体験を交えながら語られました。
「学際的」だからこそ面白い—税理士の仕事の奥深さ
一般的に税理士というと、税金の計算や申告書の作成を行う専門職というイメージがあります。しかし講演を通じて見えてきたのは、それだけではない税理士の姿でした。
角田さんは、税理士業務について「税務」「会計」「保証」「経営助言」という4つの側面から説明しました。税法や会計の知識だけでなく、企業の経営状況を把握し、将来の方向性をともに考える力も求められるといいます。法律、会計、経営など複数の分野にまたがる仕事であることから、税理士の仕事は非常に学際的で奥深いものであることが紹介されました。
特に印象的だったのは、税理士が企業経営に深く関わる存在であるという点です。会計データをもとに企業の現状を分析し、経営者とともに今後の計画を考える。あるいは、補助金申請などに必要な事業計画の作成を支援し、企業が次の一歩を踏み出すための道筋を整理する。そうした業務の話からは、税理士が単に税金を扱う専門家ではなく、企業経営のパートナーとしての役割も担っていることが伝わってきました。
税理士の仕事は、一般の人にとって見えづらい部分も多い職業です。しかし今回の講演では、税務や会計の専門性を土台にしながら、企業の課題解決や成長を支える仕事としての面白さが具体的に語られました。税理士という仕事に対するイメージが大きく広がる内容となりました。
「通学時間に意味はあるのか」から始まった税理士への道
講演では、角田さん自身の学生時代についても紹介されました。
神奈川県横浜市出身の角田さんは、学部時代、片道約2時間をかけて明星大学へ通学していました。週6日大学へ通うこともあり、往復の時間を合計すると1日分近い時間を移動に使っていることから、「こんなに時間をかけて通う意味があるのだろうか」と感じることもあったといいます。
一方で、就職活動はリーマンショック後の厳しい時期でした。就職の難しさを感じる中で、大学で学ぶ経済学の面白さも次第に感じるようになり、「大学院へ進学して公務員を目指そう」と考えるようになったそうです。進学相談の際、教員から「角田君は税理士に向いているのではないか」と声を掛けられたことが、税理士という職業を意識するきっかけになりました。
大学1年次に簿記3級へ独学で合格していたこともあり、「自分にも向いているかもしれない」という思いもあったそうですが、実際の道のりは決して平坦ではありませんでした。大学院では税法や法律の勉強に苦労しながらも学びを重ね、税理士資格取得へ向けて歩み続けました。
印象的だったのは、学部時代には通学時間の長さを気にしていた角田さんが、大学院進学後はほぼ毎日のように大学へ通い、研究や資格取得に向けた勉強に打ち込んでいたというエピソードです。学びの面白さを見つけたことで、大学との関わり方そのものが変わっていったことがうかがえました。
また、税理士業界では60代がボリュームゾーンであり、若手人材が少ない状況にあることも紹介されました。その中で角田さんは29歳で税理士登録を果たし、現在は税理士法人の代表社員を務めています。
講演全体を通して感じられたのは、税理士という仕事への強い愛着と前向きな姿勢です。資格取得や事務所経営に至るまでには多くの努力や苦労があったはずですが、それらをことさらに強調することはなく、税理士という仕事のやりがいや可能性について終始楽しそうに語る姿が印象的でした。
同じキャンパスで学んだ卒業生が、学部から大学院での学びを経て専門性を磨き、若くして業界の第一線で活躍している姿は、学生だけでなく教職員にとっても大きな刺激となる講演会となりました。