表彰される梶原双葉さん
2026年6月15日(月)から17日(水)にかけて、神戸国際会議場で開催された国際会議「M&BE12 - 12th International Conference on Molecular Electronics and Bioelectronics」において、理工学部・古川一暁教授の研究室(ソフトマター物理研究室)で研究に取り組む、理工学研究科物理学専攻の髙山雪音さん(博士後期課程1年)、棚橋達紀さん(博士後期課程1年)、梶原双葉さん(博士前期課程1年)の3名が研究発表を行いました。また、このうち梶原双葉さんの発表が「Student Poster Award」を受賞しました。
M&BE12は、有機分子やポリマー、バイオ関連材料などを用いたエレクトロニクス・フォトニクス分野を中心に、物理学・化学・生命科学の幅広い研究者が集い、最新の研究成果について発表・議論を行う国際会議です。
自己推進型イオンゲルを用いた3件の研究成果を発表
「自己推進型イオンゲル」とは、水面に浮かべると外部から力やエネルギーを加えなくても自発的に運動する特殊なゲルです。古川研究室では、このゲルが自律的に動く性質を利用し、複数の粒子が集まったときにどのような集団運動を示すのか、また、気体分子のようなランダムな運動や、高分子のように連結した構造の動きをどのように再現できるのかを研究しています。今回の発表では、自己推進型イオンゲルを用いて、粒子の集合体形成、気体分子の運動モデル、2次元高分子モデルという3つの観点から研究成果を報告しました。
※自己推進型イオンゲルや古川教授の研究については、研究広報誌「LiT」「水面で自発的に運動する自己推進型イオンゲルとは?」で詳しく紹介しています。
発表概要
今回の発表では、自己推進型イオンゲルを用いた以下の3件の研究成果について報告しました。
発表タイトル:
Dynamics of motion in self-propelled ion gel many-body system
発表者:
Yukine Takayama and Kazuaki Furukawa
シャーレ内の水面に多数の自己推進型イオンゲル粒を同時に浮かべることで、時間の経過とともに無秩序な状態から集合体が形成されることを初めて見出しました。本発表では、集合体が形成される条件や、形成後も継続するイオンゲル粒の集団運動について報告しました。
発表タイトル:
Modeling of gas kinetics using self-propelled ion gels
発表者:
Tatsuki Tanahashi, Ryosuke Masuda, Kento Igarashi, and Kazuaki Furukawa
自己推進型イオンゲル粒を気体分子に見立て、気体分子の運動を可視化するモデル実験についての研究です。自己推進型イオンゲル粒が互いに干渉せずランダムに運動する条件を利用し、2つの円形水槽を流路でつないだ実験系を作製。イオンゲル粒が水槽間を移動し、混合していく過程を観察できるモデルを確立しました。
発表タイトル:
2D Polymer models with controlled flexibilities using self-propelled ion gel
発表者:
Futaba Kajiwara, Noriaki Furukawa, Hajime Kuroshima, and Kazuaki Furukawa
自己推進型イオンゲル粒をワイヤで連結し、2次元高分子モデルとして扱う研究です。25個のイオンゲル粒を連結した試料を水面に浮かべ、全体の形状が時々刻々と変化する様子を観察しました。ワイヤ間の角度を制御することで高分子の剛直性を再現できることを示し、理論とも矛盾しない2次元高分子モデルであることを報告しました。
「目には見えない高分子の運動を、目に見える形で観察できるところが面白い」ー受賞者、指導教員コメント
今回の研究発表および「Student Poster Award」受賞について、受賞者の梶原双葉さんと指導教員の古川一暁教授に、受賞の喜びや研究の面白さ、研究との出会い、今後の展望について伺いました。梶原さんからは、自身が物理学の研究に関心を持った経験を踏まえ、高校生に向けたメッセージも寄せられました。
梶原双葉さん
「このたびは、このような賞をいただき、大変うれしく思います。この賞は、古川先生のご指導と、研究室の先輩方からの助言や支援があってこそ、いただくことができました。この場をお借りして感謝申し上げます。
この研究の面白さは、目には見えない高分子の微小な運動を、自己推進型イオンゲルの運動特性を利用して、実際に目で見える形で観察できるところにあります。今回の研究では、自己推進型イオンゲルを多数連結して水面に浮かべることで、2次元の高分子モデルを作製しました。
私は大学に入学した当初、天文学について研究したいと考えていました。しかし、研究室を選ぶ際に自己推進型イオンゲルを知り、実際に目の前で動く様子を見たことで魅力を感じました。外力を加えていないにもかかわらず、ゲルが自発的に動き出す様子を見て、本当に驚いたことを覚えています。
高校生の皆さんも、大学入学後に、自分の知らない、直感に反するような現象を目の当たりにすることがあるかもしれません。そのときは怖がらず、積極的に探究してみることを強くお勧めします。
今回の受賞を励みに、今後もより一層研究に励んでいきます」
理工学部・古川一暁教授
「今回の国際会議では、学生たちが日頃取り組んできた研究成果を国内外の研究者に向けて発表し、多くの意見をいただく貴重な機会となりました。
自己推進型イオンゲルを用いた研究は、目に見えるスケールで物理現象を観察できる点に大きな特徴があります。今回発表した3件の研究も、それぞれ異なる視点からこの特徴を活かした内容となりました。
梶原さんのStudent Poster Award受賞の対象となった研究は、3年前から継続して実施しているテーマです。賞は発表や質疑応答を行った個人に与えられるものですが、何年もの実験の積み重ねが基礎となっています。今後もさまざまな研究テーマに継続して取り組み、研究室の良い伝統を築いていきたいと思います。」
梶原双葉さんの発表ポスター(抜粋)
神戸国際会議場での記念撮影(左から:棚橋達紀さん、梶原双葉さん、髙山雪音さん、古川一暁教授)
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