2025年12月18日、一般社団法人明星会 明星大学同窓会および明星大学ボランティアセンターの共催で、石川県輪島市門前町で実施された災害ボランティア活動の報告会が開催されました。
本報告会では、2024年1月の能登半島地震、同年9月の能登半島豪雨災害により甚大な被害を受けた被災地において、本学学生が取り組んだ活動について共有されました。当日は、学生をはじめ、同窓生、教職員、近隣のボランティア団体のスタッフなどが来訪し、現地で行われた支援活動の内容や被災地の現状に加え、「何をするか」だけでなく「どのように関わるか」に目を向けながら、心に寄り添う支援の在り方について、学生たち自身の言葉が交わされました。
支援の現場で見えてきた「人」の役割
本学学生による2年間にわたる災害ボランティア活動は、本学教育学部教育学科卒業生であり、ジョージ防災研究所代表・防災アドバイザーの小野修平氏のコーディネートの下、石川県輪島市門前町を中心に継続して実施されてきました。小野氏は、2024年1月の能登半島地震以降、東京を拠点に現地へ足を運び、通算59回にわたる支援活動に携わってきました。
報告会の中で小野氏は、自身の支援活動について、「行政支援」と「地域支援」という二つの側面があることを説明しました。地震発生直後には、市役所が担う災害対応を支えるため、避難所運営や物資整理など、行政の業務を補完する形での支援が求められました。一方で、時間の経過とともに、地域コミュニティそのものを支え直す関わりの重要性が増していったと振り返りました。
輪島市門前町では、地震発生後、長期にわたる避難生活が続き、指定避難所がすべて閉鎖されたのは2024年8月でした。実に約8か月に及ぶ避難生活です。さらに同年9月には能登半島豪雨災害が発生し、仮設住宅の浸水や道路の寸断などにより、地域は再び厳しい状況に置かれました。こうした被害の長期化・複合化により、行政による対応だけでは行き届かない場面も多くありました。
そのような状況の中で小野氏は、住民同士が声を掛け合い、支援に関わる人と日常的に言葉を交わし、同じ時間を過ごすといった関係性が、生活を支える大きな力になっていたと振り返りました。
支援活動を一人で続ける中で限界を感じる場面もあった一方、学生と共に現地に入り、住民と自然に関わる姿を見ることで、支援の在り方そのものを考え直すようになったといいます。
そうした経験を踏まえ、「最後に人を救うのは、人なんだなと思っています」と語りました。
支援の中で大切にされてきた「関わり」
小野氏は、災害支援というと瓦礫撤去や物資搬送といった作業、いわゆる「力仕事」をイメージされがちであるとした上で、実際の現場では、そうした支援だけでは行き届かない場面が多かったと話しました。避難所が閉鎖され、時間が経過する中で、物資が足りていても生活のしんどさが残る場面があり、住民の話を聞いたり、一緒に何かをしたりする関わりが、大きな意味を持つこともあったといいます。
その経験を踏まえ、小野氏は災害支援の現場で大切にしてきた視点として、次の四つを挙げました。
1.助かったいのちを守る支援
2.誰ひとり取りこぼさない支援
3.ココロに寄り添う支援
4.被災者というレッテルを貼り続けない支援
中でも、「心に寄り添う支援」と「被災者というレッテルを貼り続けない支援」の重要性が繰り返し示されました。報告会では、作業内容や成果そのものよりも、「どのように関わったのか」「その関わりの中で何を感じたのか」に多くの時間が割かれました。
学生が語った、支援の現場での関わり
今回登壇したのは、井上まゆさん(理工学部 総合理工学科 物理学コース2年)、鈴木楢磨さん(理工学部 総合理工学科 化学・生命科学コース2年)、芹澤望玖さん(教育学部教育学科 教科専門(社会)コース3年)、都丸真大さん(教育学部教育学科 教科専門(社会)コース3年)、益永碧さん(教育学部教育学科 教科専門(社会)コース3年)の5名です。
学生の一人は、活動に参加する前の心境について、「自分に何ができるのか」「役に立てるのか分からず、不安があった」と振り返りました。避難所運営や物資整理といった支援が行われる中で、自分がどのように関われるのか分からないまま、現地に向かったと話しました。
現地での活動を通して、その学生は、避難所運営など行政の対応を支える支援と、地域の中で人と向き合う支援とでは、役割が異なることを感じたと話しました。時間の経過とともに、地域の中で人と関わる場面が増え、そこでの関係性が活動の中心になっていったと振り返りました。
印象に残っている場面として挙げられたのが、地域の人々と一緒に行ったたこ焼きイベントです。学生たちは、一緒に作り、一緒に食べながら、自然に言葉を交わす時間を過ごしました。特別な支援をしようとするのではなく、同じ時間を共有する中で、少しずつ距離が縮まっていったと語りました。
活動を振り返り、その学生は、「一緒にいてくれるだけでありがたい」と言ってもらえた場面が心に残ったと話しました。何かを“してあげる”ことではなく、同じ場にいることそのものが、支援として受け止められていたと感じたそうです。
今後に向けて — 関わりを持ち続けるということ
報告会の終盤では、これまでの活動を振り返りながら、学生たちの思いが共有されました。今月あらためて現地を訪れる予定の学生もいます。
活動を振り返り、「もっと話を聞けたのではないか」「もっと一緒にいられたのではないか」と感じた場面があったという声もありました。寄り添いきれなかったという思いが、再び現地へ向かうきっかけになったと話しました。
また、複数の学生から、被災地での経験を通して、特別な場面だけでなく、日常の中で周囲の人とどう関わるかを考えるようになったという声も聞かれました。被災地での経験が、それぞれの生活や人との関係を見つめ直す機会となったことが共有されました。
「何をしたか」ではなく「どう関わったか」という学生たちの言葉が、災害支援を特別な出来事としてではなく、身近な人との関わりとして考えるきっかけを与えてくれた報告会となりました。