学生と地域住民が交流しながら学びを深める取り組みとして、福祉実践学科では「地域サロン活動センター」を2024年11月に開設しました。
“つながる・つなげる”をキーワードに、学生が主体となって企画を進め、継続的に活動が行われています。
今回は、2025年11月と12月に実施された2つのイベントを取材しました。現場で参加者の姿を見たり学生と話をする中で、児童、障害のある方、高齢者など、福祉が向き合う対象の幅広さと、地域の生活と密接につながる取り組みであることをあらためて実感しました。
そうした関わりの中で、学生たちが地域の方とのやりとりを通して「学び」を積み重ねている姿も見られました。
地域サロン活動センターとは
地域サロン活動センターは、学生と地域が継続的に関われる場づくりを目的として設立されました。
これまで学内外で行われてきた地域サロン活動を発展させ、大学での学びを地域につなげながら、学生が学年や学科を越えて参加できる仕組みを整えることを目指しています。
活動は、学生が主体となって企画し、地域住民や卒業生、学内外の団体と協働しながら進められています。
また、健康づくり・交流・福祉体験など、地域のニーズに応じた取り組みを行っており、世代や背景を問わず、誰でも参加できる開かれた拠点として位置づけられています。
体操をきっかけに広がる地域との交流
11月26日に、本学北側の地域(日野市程久保2丁目)にある交流拠点「明星地区つながりの家アムール」との共催で、「ひの健幸貯筋体操&学生とゲーム・お茶会」が開催されました。
「ひの健幸貯筋体操」は、日野市が推進する高齢者向けの筋力トレーニングで、転倒予防や身体機能の維持に効果があるとされています。DVDの映像を見ながら椅子に座って手軽に取り組めることから、多くの高齢者に親しまれている体操です。
当日使用した椅子の中には、福祉実践学科の学生が高齢者の方にヒアリングをした上で設計に携わったものもあり、学内での学びが地域の活動に生かされる場面となりました。
また、この日は市役所で福祉に携わる職員も視察に訪れており、この取り組みが行政も含めて密接に進められていることがうかがえました。
当日は、受付開始前から近隣の高齢者の方や地域の高齢者施設の利用者が次々と来場。30名以上が参加し、皆さんの表情や会話から「この日を楽しみにしていた」という思いが伝わってきました。
40分間の体操のあとは、学生との会話やゲームを楽しむ時間となり、会場には笑顔があふれ、終始にぎやかな雰囲気に包まれました。
お茶会では、学生の緊張とは裏腹に、高齢者の皆さんが嬉しそうに声をかけてくださり、会話は自然に弾んでいきました。「お名前は?」「ご出身はどちらですか?」といった何気ないやり取りから笑顔が広がり、学生にとっても“自然体で向き合えばいいのだ”と感じられる時間となりました。
福祉施設から参加した方の支援者からは、「普段は見られないほど穏やかで積極的で、本当に来てよかった」という声も寄せられました。学生の寄り添う姿勢が相手に伝わり、安心感や参加意欲につながっていたことがうかがえます。
地域の方々と学生が同じ時間を共有し、体操や会話を通して自然に関わりが生まれていく様子が印象的でした。こうした交流が、地域での活動をより身近に感じられるきっかけとなった一日でした。
福祉機器にふれながら学ぶ — 1年生が中心となって企画した展示体験イベント
12月3日、「遊んで学ぼう!福祉機器体験」が行われました。この企画では、福祉用具や運動遊具を扱う企業に協力いただき、実際の機器を学内に持ち込んで展示する体験型イベントが実現しました。学生が自ら触れ、試し、確かめることで、机上では得られない学びにつながる貴重な機会となりました。
展示された機器の中には、障害のある幼児・児童の支援を想定した用具や遊具も多く含まれており、学生は多様なニーズに応じた機器に直接ふれることができました。
この取り組みは、1年生の授業科目「地域ニーズ開発」の一環として実施されたものです。当科目では、地域で求められている福祉ニーズを発見し、学内の「地域サロン活動」を通して解決に向けた活動につなげることを目標としています。今回のイベントでも、企画の立案や企業への依頼、当日の運営まで、1年生が主体となって取り組みました。
学生たちは準備の段階から企業担当者との調整を行い、当日の会場でも来場者に丁寧に説明するなど、外部の方との関わりの中で多くの経験を積んだ様子が見られました。学年が上がると実習や地域との連携が本格化するため、このように早い段階から“外部と話す経験”を持てることは大きな意味があります。
当日は、多様な福祉機器を学生自身が実際に触れて確かめる姿が見られ、会場は活気にあふれていました。
専門家の視点で見た「福祉機器体験」の意義とは
今回のイベントは、学生の学びだけでなく、来場した障害者支援施設の方々にとっても有意義な時間となったようです。
実際にお話を伺うと、この取り組みの意義や、展示内容の特徴について興味深い声が寄せられました。
社会福祉法人 東京都手をつなぐ育成会 清瀬育成園ひだまりの里きよせ
学生が主体となって企画・運営する福祉機器の展示会は、これまでほとんど見たことがなく、とても新鮮でした。大学の授業の一環としてこのような機会が設けられていること自体が貴重で、学生の皆さんにとって大きな学びになるだけでなく、私たち施設側にとっても有意義な場となりました。
今回の展示は、発達障害や自閉症のある幼児・児童に向けた用具や遊具が多く、特に感覚統合(※)に焦点が当てられていた点が印象的でした。支援の現場でも情報が限られる領域であるため、大学生のうちからこうした機器に触れ、支援の視点を具体的に持つことはとても良い経験になると感じました。
また、学生さんが企業の方と調整したり、来場者に丁寧に説明したりする姿から、外部の方と関わりながら学びを深めている様子がよく伝わってきました。私たちにとっても、学生の姿を知ることができ、現場職員にとって良い刺激となる時間でした。
大学が主催し、学生が運営し、施設側が“訪れる側”として参加できる機会は非常に珍しく、新しい形の連携として今後も期待したい取り組みです。
※「感覚統合」とは
視覚・聴覚・触覚・前庭感覚(バランス)など、身体が受け取るさまざまな感覚情報を脳で整理し、日常生活の行動につなげる力のこと。
この働きがうまくいかないと、姿勢の保持や運動、情緒の安定、学習面などに影響することがあり、療育やリハビリテーションの分野で重要視されています。
今回の取り組みは、初めての試みでしたが、学生にとって多くの学びを得る機会となりました。同時に、支援施設の方や企業の方にとっても価値ある交流と気づきの場となったようです。三者それぞれにとって有意義な時間が生まれ、新しい関わりの可能性が広がりました。
地域との関わりが育む、福祉の実践と学び
今回の2つの活動を通して、福祉と地域がいかに密接に結びついているかを改めて実感しました。地域の方々との関わりが、学生にとって学びを深める大切な機会につながっています。
今後も地域の皆さまのお力をいただきながら、活動の場を広げていきたいと考えていますのでご協力のほどよろしくお願いいたします。