2025年9月24から26日に鳥取大学にて開催された第33回地球環境シンポジウム(土木学会)において、経済学部経済学科4年生の堀川 媛子さんがポスター発表しました。
研究発表について
タイトル
紙ストローを題材とした環境政策における不便益構造と支払意思額の関係
The Cost of Discomfort: Willingness to Pay for Environmentally Harmful Alternatives in Response to Eco-Product Dissatisfaction
発表者
経済学部経済学科4年 堀川 媛子
研究内容
石油由来のプラスチック製品は、その利便性から広く利用されてきましたが、使用後の不適切な処理により海洋汚染をはじめとする環境問題を引き起こす原因となっており、現在ではその利用に対して規制が設けられています。こうした規制により、飲食店ではプラスチック製食器の有料化や紙製食器などの代替品の提供が義務化されました。
紙製食器は、製造費用が比較的安価であることから代替素材として積極的に導入されていますが、使用者の不満も大きく、2025年3月にはスターバックスが紙製品からバイオプラスチック製品へと変更する事例も見られました。
このように、人々が受け入れにくい環境対策が実施された場合、環境問題の解決に向けて人々が支払うコストは大きくなる可能性があり、長期的な解決が求められる環境問題においては、持続可能な政策とは言えない場合もあります。
そこで本研究では、紙ストロー導入時に生じる不快感の解消策(紙ストローからプラスチックストローへの変更)に対する支払意思額(WTP)を仮想評価法(CVM)によって算出し、この金額の大きさから紙ストローに対する「不便益」の程度を定量的に評価しました。
分析の結果、素材特性に起因する快適性の損失が金銭的選好に転化する傾向が確認され、また環境意識の高さが必ずしも実際の行動に結びつかない「意識–行動間の乖離」が示唆されました。脱石油製食器の実現には、理念に依存した環境配慮設計には限界があり、快適性と納得性が両立する制度設計が求められることが明らかとなりました。