2025年8月7日〜9日に韓国・ソウルで開催された国際学会「The 23rd International Conference for Media in Education(ICoME 2025)」において、教育学部今野ゼミの3年生が学生セッションで英語による研究発表を行い、うち1件が「Young Scholar Award」を受賞しました。
この賞は、各国の教育工学・メディア教育の研究者によって評価された学生発表の中から、総合得点に基づいて授与されるもので、国際的にも高い評価を受けた成果です。
国際学会で研究発表を行った教育学部今野ゼミの学生たち
発表内容紹介
外国にルーツをもつ児童が多い小学校での端末活用による学びの支援 — 東京都O区立小学校の事例より —
(Instructional Support Frameworks Using Learning Devices in Elementary Schools with High Populations of Children with a Foreign Background: A Case Study of O Public Elementary School in Tokyo)
発表者: 清水 優里菜、小林 真子、山中 幸希
概要: 外国にルーツをもつ児童が約6割を占める東京都内の公立小学校を対象に、学習者用端末を活用した支援方法を明らかにすることを目的としました。2025年5月に授業観察と教員インタビューを実施し、KJ法で分析した結果、①ICTとアナログ教材を併用した多様な学習支援、②文化理解を促す家庭との連携、③多言語による継続的コミュニケーションの3点が主要な方略として抽出されました。
オープンスペース活用における教師のかかわりについての考察
(A Consideration of Teachers’ Engagement in the Utilization of Open Spaces)
発表者:佐藤 樹真、宇山 采花、小倉 あやめ
概要:オープンスペース環境での自律進度学習における教師の指導・支援方法を明らかにすることを目的としました。1996年から同教育を実施する東京都内の公立小学校で参与観察と教員インタビューを行い、KJ法で分析しました。その結果、①児童の社会的能力や学力を体系的に把握する重要性、②特別支援員による個別支援、③ICTを活用した進捗管理の有効性が示されました。
ICTを活用した地域間交流学習における教師の実践的工夫 — 大阪府立T小学校の事例より —
※Young Scholar Award受賞
(Practical Ingenuity of Teachers in Interregional Exchange Learning Utilizing ICT: A Case Study of Public T Elementary School in Osaka Prefecture)
発表者: 斉藤 秋澄、坂本 涼、浦谷 燦汰、西海 陽
概要: ICTを介した地域間交流学習において、学習意欲を高める教師の工夫を明らかにすることを目的としました。交流学習を経験した大阪府T小学校の担当教員に半構造化インタビューを行い、質的に分析しました。その結果、教師の方略と背景要因を6分類し、①環境設計、②コミュニケーション促進、③適応的授業計画の3つの側面が抽出されました。
参加した学生のコメント
清水 優里菜さん
私はICoME2025に参加し、英語での発表と質疑応答を通じて、自分の英語力の不足を痛感しました。それでも、現地の学生と笑い合いながらお互いの文化について英語で話すことができ、言語の壁を越えた対話の楽しさを実感しました。
特に印象的だったのは、海外の学生たちとの交流です。彼らの高い語学力と真摯な学びの姿勢を間近で見て、私も努力を重ねて成長したいという意欲が湧きました。
この経験を大切にし、英語力の向上や研究活動に活かしていきたいと思います。
宇山 采花さん
ICoMEでは「オープンスペースでの教師の働きかけ」について研究・発表を行いました。困難もありましたが、達成感を得ると同時に、英語で意見を伝える力の重要性を痛感しました。
今後は、チームで課題を解決する力をさらに高めるとともに、語学力を磨き、国際的な場でも積極的に交流できる人を目指していきたいです。
西海 陽さん
今回のICoMEでの発表を通して、チームの意見をまとめる難しさや英語で発表することの難しさを実感しました。研究を知らない人にシンプルな英単語で伝えることは非常に難しかったですが、英語力をさらに伸ばすきっかけにもなりました。
英語でのコミュニケーションは簡単ではありませんでしたが、意思疎通ができることで、学びの幅や身の回りの世界が広がることを強く感じました。また、他の学生や教授の発表を見て、より高いレベルの研究やプレゼンテーションを肌で感じることができたのは、非常に貴重な経験でした。
今野ゼミの取り組み
今野ゼミでは、学生が自ら教育課題を設定し、教育現場での観察やインタビューを通じて得た知見をもとに、理論的な考察を深めています。ゼミ内では、得られた視点や疑問を共有し、学生同士の議論や助言を通じて新たな問いや分析視点が生まれます。こうした「現場と理論」「個人と仲間」の知見を往還させる共創的な学びが、教育実践研究の質を高める原動力となっています。
今回の受賞は、学生たちの主体的な学びと探究の成果であり、今後の教育実践研究へのさらなる貢献が期待されます。