2022年度明星大学入学式 学長告辞
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。私は明星大学教職員を代表し、皆さんを歓迎するとともに、保護者・ご家族の皆様にも心からのお祝いを申し上げます。
今年度の入学試験の準備では、皆さん苦労されたことでしょう。新型コロナウイルス感染症の危険、将来への不安など、多くの困難があったと思います。そうしたなか、皆さんは明星大学を目指し、その志を遂げられました。よく頑張った皆さんに、学長として敬意を表します
ここで、コロナ禍への本学の対応と取組について振り返っておきます。
新型コロナウイルス感染症の拡大が始まった2020年3月、明星大学は、「学生・教職員の命と安全」と「学生の学修機会の保障」を最優先事項とする「新型コロナウイルス感染拡大の対応に関する基本方針」を発表しました。以来、学生・教職員が新型コロナウイルス感染症予防対策をしっかり守ってきてくれたおかげで、明星大学は本日まで学内でクラスターを発生させていません。
この基本方針に基づき、2020年度前期には学内入構制限、遠隔授業中心の時間割への組み替え、学修支援システムの整備、課外活動の制限などを行いました。後期には2021年度を視野に入れ、対面授業を計画的に増やし、学内でも遠隔授業を受けられるようWi-Fi 環境の拡充や高度化を進めました。
2021年度に入り、明星大学は全開講授業の約半数を対面授業で行うことにしました。また、学内の3密を避けるために、大人数授業をオンラインで実施するなどして、毎日の登校者数をコロナ禍以前の約3割に抑えました。そして、本学関係の感染者数が一時的に減少した昨年11月から、2022年度授業を視野に入れた対面授業の増加を計画的に試行しました。
2年におよぶこのようなコロナ禍対応、コロナ禍のもとでの教育経験、そしてその実績評価に基づき、明星大学は、安全を確保しつつさらなる教育の質的向上を目指し、2022年度は授業総数の97%を対面授業で行う計画を立てています。
ほぼすべての授業が対面授業になりますが、コロナ禍以前に戻すことが目的なのではありません。過去2年間の経験に基づき、より学修効果の高い教育手法で授業を編成することにしたのです。
コロナ禍は、なお終息のきざしを見せていません。しかし、1年生の皆さんがしっかり勉強でき、一人ひとりが学修目標を立て、それを達成できる学修環境をこのように時間をかけて整え、明星大学は本日、皆さんを迎えることができました。このことを学長として喜び、また誇りに思っています。
皆さんがこれから4年間をすごす明星大学。その教育的特色とは何でしょうか?最初に強調しておきたいのは、ここ日野キャンパスに、理系・人文社会系・融合系の9学部12学科がすべて集まっているということです。
総合大学といわれる大学の多くは、いくつものキャンパスに学部を分散させています。本学はそうではありません。ひとつのキャンパスに全学部が集結しています。学部間の連携が取りやすい大学だということです。
この特色を活かそうと、明星大学はいま、教育改革「明星大学教育新構想」の実現を目指しています。この「新構想」の柱のひとつが、「クロッシング」という「分野交差型」教育の導入です。
「分野交差型」とはいったい何でしょうか?具体的な例で説明しましょう。
皆さんの多くは、スマートフォンを毎日使っていると思います。では、スマホはどのようにできているのでしょうか?
スマホを分解してみましょう。そこにはプリント基板、CPU、メモリー、ストレージ、バッテリー、通信機器、タッチパネル、カメラなどがひしめいています。そうしたスマホに保存したり他の人とやり取りしたりしているのは、さまざまな「情報」です。そしてその全体を、魅力あるデザインでまとめています。それがスマホです。
このように、スマホは精密機械、電力、光学、デザイン、情報学など、様々な領域が手を結んで初めて完成するものなのです。
つまり、ひとつの専門領域だけでは、スマホは生まれないのです。それぞれの分野の専門家が集まり、丸いテーブルを囲むようにして知恵を出し合い、分野交差的に協力して初めてスマホが作られ、世の中に出回るのです。
本学を例にとれば、理工学部、情報学部、デザイン学部、経営学部などが協力しあってはじめてスマホが完成するというイメージです。
AIで制御する自動運転も分野交差型です。仮に事故がおきても、AIを牢屋に入れるわけにはいきません。どうしても法律家の出番になります。また、生命科学の最先端である再生医療やクローン技術の場合には、倫理や法律、社会的価値観などがかかわってきます。このように最先端の科学技術は、人文科学や社会科学的な視点が含まれて初めて実用化されうるのです。
大学にとり、学部学科でのスペシャリスト育成は大切な役割です。しかし、明星大学では9学部12学科がワンキャンパスに集結しています。この大きな強みを活かさない手はありません。学部学科を横断する授業を増やし、専門性とともに横断性も身に付けた卒業生を生み出していきたい。それを本学では【協働する知性】、すなわち「学びあい、協力しながら一緒に働く態度」と呼んでいます。学生の皆さんには、ぜひそれを身につけてほしい。そう私は願っています。
皆さんはDo It Yourself「自分で作る」という言葉を知っていると思います。その背後には、「何でも自分ひとりで組み立てたり、作り上げたりするのが良い」という価値観があります。
しかし、それがいま変化してきています。「自分だけで作る」のでもよいのですが、いま社会では、むしろDo It with Others、つまりだれかと一緒に何かを作り上げていく【協働する知性】に、価値が置かれるようになりつつあるのです。
「協働」とは、いろいろな人々と交流して皆の前で自分を表現し、仲間の弱点は自分が補い、自分の不足を仲間が補完するという、ジクソーパズルのような形で相乗効果を発揮していくことです。所属や専門の垣根を越えて仲間と学び合い、学外の人たちとも意見交換をしていけば、自分の持ち味や関心に気づき、モチベーションを高めていくことができます。自己実現を実感する、そうした「協働」の経験を学生時代に繰り返していきましょう。これを自分の取り組みの「型」として身につけておけば、社会に出たときに必ず役に立ちます。
そうした【協働する知性】への第一歩が、皆さんが今月から必修科目として履修し始める初年次教育科目「自立と体験1」です。この「学部横断型」の授業では、他学部他学科の同期生と一緒にさまざまな課題に取り組みます。自分とは異なる学部学科の学生の考え方を知る最初の機会になります。そこでの経験を、これからの4年間で身につけていく【協働する知性】への入り口にしていただきたいと思います。
明星大学は、いま説明した【協働する知性】とともに、【学び続ける力】の育成を重視しています。「人生100年時代」が到来し、大学を卒業してから50年くらいは現役で働くかもしれない時代になってきました。ならば、社会の変化や自分のポジションの発展のなかで、必要な知識や技能を更新していく必要があります。大学卒業時点での知識や技術は、遠からず古びていくからです。
皆さんには、常に最新の知識や技能を身に付けることをいとわない人間になってほしい。その願いが【学び続ける力】の涵養という言葉に託されているのです。
新入生の皆さん。明星大学の充実した授業やゼミ、実験や実習などを通じ、【協働する知性】と【学び続ける力】をしっかり身につけていきましょう。仲間を作り、語り合い、先輩たちの声に耳を傾けてください。そして、教職員の温かいサポートを得て、すばらしい大学生活を送ってください。明星大学は、皆さんのための支援を怠ることはありません。
以上、皆さんの明星大学入学を祝うとともに、皆さんの洋々たる前途への期待を述べ、2022年度入学式学長告辞といたします。
関連リンク