理工学部総合理工学科環境科学系の亀卦川 幸浩(きけがわ ゆきひろ)教授が2022年2月に国際誌Applied Energy(インパクトファクタ:11.446)より発表した論文が、カナダの調査機関Advances in Engineering(AIE)によりKey Scientific Article(主要科学論文)として選出され、同機関のウェブサイト上で特集されました(詳細は以下リンクを参照)。
AIEはカナダに本拠を置き、主要な国際学術誌から工学分野の優れた論文をKey Scientific Articleとして選定し(採択率0.1%以下)、同機関のウェブサイト上にその特集記事を掲載し紹介する事業を手がける機関です。
今回選出された論文は、都市域での気候変動に関連し古くから指摘されてきた"気温上昇→冷房エネルギー消費増→排熱増→更なる温暖化"の悪循環(ポジティブフィードバック)による影響を定量的に解明したという内容です。独自開発の都市気候シミュレーションモデルを駆使し、都市の気温やエネルギー消費に対する影響を解析した結果、悪循環は都市の気温上昇を10~20%ほど自己強化させる方向に作用し、これにより都市部での冷房エネルギー消費量を10%程度増加させている事が推計されました。この悪循環は、これまでの気候予測では考慮されておらず、気候変動に伴う熱波や豪雨等の災害リスクの集中が懸念される世界の都市域での気候変動予測の高精度化に向け、悪循環を気候シミュレーションに組み込む事の必要性が本論文により示されました。
なお、この論文における気候シミュレーションの数値実験とデータ解析の一部は、当時、亀卦川教授の研究室に在籍した大学院生(OG)の中嶋一紗さん(本学大学院理工学研究科環境システム学専攻博士前期課程、2019年3月修了)が担当したものであり、本論文の第2著者として名前を連ねています。
対象論文
Kikegawa, Y., Nakajima, K., Takane, Y., Ohashi, Y., & Ihara, T. (2022).
A quantification of classic but unquantified positive feedback effects in the urban-building-energy-climate system.
Applied Energy, 307, 118227.