「デザインの力で社会の課題を解決する」デザイン学部4年生 加藤伶奈さんにインタビュー

「デザインの力で社会の課題を解決する」

デザイン学部4年生 加藤伶奈さんにインタビュー

2020/03/16 公開

明星大学

 ビジネスの現場でも「デザイン思考」と呼ばれるフレームワークが浸透し、今「デザイン」そのものに注目が集まっている。本学では、デザイン力を「日常にある問題を発見し解決策を考える『企画力』、それを的確に伝える『表現力』を融合させた力」と定義する。今回は、今春デザイン学部を卒業する加藤伶奈さんに、デザイン学部で学んだこと、そしてその集大成となる卒業研究について話を聞いた。

好きを活かしながら幅広い学びを

 加藤さんは、昔から絵を描くのが好きだったそうだ。好きなことを活かしながら、社会で幅広く活用できるスキルや知識を身につけたい。その想いから、6つの専門分野を組み合わせて選択できる明星大学のデザイン学部を選択した。

 デザイン学部の授業は実践的だ。「プロダクトデザインC」では、自分が作ったプロダクトを会場で実際に販売した。「自分の商品を販売したのは人生で初めて。どうすれば買ってもらえるか真剣に考えました。実際に売れた時の有り難さ、そして売れなかった時の大変さを知りました。売れないということは、相手にとって必要とされていないということ。相手が求めているものを考え、作ることを学びました。」

「プロダクトデザインC」の授業で制作・販売したプロダクト「おれんじしゃく」

「プロダクトデザインC」の授業で制作・販売したプロダクト「おれんじしゃく」

自分本位ではなく、相手のニーズに応えられるものが本当のデザイン

 今回加藤さんが行った卒業研究は、「訪日外国人に向けたエコノミークラス空間の提案」だ。2020年に開催される東京オリンピックに向けて、訪日外国人の長距離フライトをより快適に、そして日本らしさを感じられる新しい空間にしていくことで、インバウンド拡大にも繋げる提案となっている。

 加藤さんが提案するデザインのポイントは ①前方リクライニングの導入 ②プライベート空間の演出 ③座面の拡大化 ④日本らしさと安らぎを感じられる藍色、桜文様のデザイン の4点だ。

プレゼンボード全文「訪日外国人に向けた エコノミークラス空間の提案」

 スペースや仕様に限りがあり、これ以上改善の余地がないようにも思われる「エコノミークラス空間」を題材に、「利用者がいかに快適にすごせるか、日本らしさを感じてもらえるか」を徹底的に考え抜き、あきらめずに打開策を模索した結果として、このような発展的かつ実現可能性の高い提案に至った。

 利用者のニーズを拾うため、訪日外国人や友人知人への聞き取りのほか、羽田空港での直撃アンケートも実施した。デザイン学部で叩き込まれた「自分本位のデザインではなく、相手のニーズに応えられるものが本当のデザイン」という想いがその根幹にある。

根幹科目「企画表現1~6」で徹底的に叩き込まれる提案力

 1年生前期から3年生後期まで、半期ずつ6つの演習科目を段階的に履修する「企画表現1~6」は、デザイン学部の根幹となる必修科目だ。 1(対話・文章)→2(調査・分析)→3(思考・発想)→4(プレゼンテーション)→5(統合)→6(発信)と段階的に学び、実践的なデザイン力を身につける。 加藤さんも、この科目が主軸となり、デザインにあたっての土台となる考え方、「相手本位」のデザイン力が身についたと語る。

「企画表現演習5」プレゼンに向けて。ユニットを組み、それぞれの得意分野を活かしながら共同で企画を立てる。

「企画表現演習5」プレゼンに向けて。ユニットを組み、それぞれの得意分野を活かしながら共同で企画を立てる。

「企画表現演習5」地域活性化のアイディアを自治体や学内外関係者に向けてプレゼン。

「企画表現演習5」地域活性化のアイディアを自治体や学内外関係者に向けてプレゼン。

「企画表現演習5」の授業で提案したもの。日野市活性化のため新選組をモチーフにデザインしたこのイベントブースは、実際に日野市が採用・制作しイベントで使用された。

「企画表現演習5」の授業で提案したもの。日野市活性化のため新選組をモチーフにデザインしたこのイベントブースは、実際に日野市が採用・制作しイベントで使用された。

デザインは、「作る」だけにとどまらない

 最後に、加藤さんに「デザインとはなにか」聞いてみた。「作るだけがデザインではありません。コンセプトを考え、構成を作り、レイアウトを組み立てる、その全部がデザインです。例えば、ロゴ一つとっても、色、形、サイズ、全てに意味が込められています。『なんとなくこの色でいいや』ではなく、細部まで考え抜くことが重要です。」

 デザインに限らず、ものづくりの基本はクライアントに沿ったコンセプト設計だ。ここをないがしろにしては、価値のあるデザインは完成しない。このデザイン・ものづくりの本質を、加藤さんは表面的ではなく、自分の中にしっかりと落とし込んでいた。

 加藤さんは、大学卒業後、住宅インテリアの仕事に就くそうだ。「お客さんのより良い暮らしをデザインしていければいいですね。4年間で学んだ本当の意味での”デザインの力”を今後の仕事に活かせればいいなと思います」と今後の想いを話してくれた。

 「デザインは難しいです。考えて考え抜くことは大変ですが、そこには必ず意味があるし、それがやりがいにつながります」と語ったように、加藤さんは社会に出てからも、クライアントのために徹底的に考え抜き、人々に寄り添うデザインを作り上げてくれるだろう。