全日本eスポーツ学生選手権大会で優勝、橋木俊平選手にインタビュー

リアルスポーツと同じ「熱狂」がそこにある

2020/03/11 公開

明星大学

 近年、ビデオゲームによる対戦競技、いわゆる「eスポーツ」が注目を浴びている。全ゲームタイトルの競技人口は世界で推定1億人とされている。今回は、「ウイニングイレブン 2020」学生ナンバー1を決める「第2回 BS11CUP全日本eスポーツ学生選手権大会」で優勝した本学経済学部1年生の橋木俊平選手に、eスポーツの魅力やeスポーツを始めたきっかけなどを教えてもらった。

eスポーツとは?

 eスポーツとはエレクトリックスポーツの略称で、スポーツゲームに限らず、カーレースゲームや「ぷよぷよ」といったパズルゲーム、「鉄拳」シリーズといった格闘ゲームなど、その種類は多岐にわたる。すでにeスポーツの市場規模は、2021年にはおよそ1,600億円にまで拡大されることが想定されており、海外では年収億超えのeスポーツ選手も多く、職業の一つとして確立されている。

 橋木俊平選手がこのeスポーツの世界に飛び込んだのは高校生の時だ。小学校2年生から始めたサッカーに一つ区切りをつけ、そこからは友人と一緒に「ウイニングイレブン」を始める。「ウイニングイレブン」は実践と同じように戦術を組み、自分だけのオリジナルチームを作って試合をするサッカーゲームで、1995年の発売以来サッカー愛好者から絶大な人気を誇っている。

 ウイニングイレブンを始めた当初は公式の大会はなく、オンラインで知らない人と対戦したり、友人と切磋琢磨しながら自分のゲームの腕を高めていたそうだ。2018年に「BS11CUP全日本eスポーツ学生選手権大会」が始まったが、当時、橋木選手は高校生で出場権はなかった。満を持して、昨年開催された第二回大会に初出場。最激戦区の関東予選をTOPで通過し、決勝大会では学生プロも含めた12名のトーナメントを勝ち上がり、優勝という快挙を遂げた。 「本戦に初出場ながら優勝できたことは、自分でも驚いています。緊張もなく肩の力を抜いて普段通りのプレイができたので、それが功を奏したのかなと思っています」と橋木選手は優勝のときの様子を振り返る。

リアルスポーツと同じ「熱狂」がそこにある

 橋木選手に、ずばりeスポーツの魅力を聞いてみた。「実際のスポーツと同じく、見ている人と一緒に盛り上がれるところが魅力です。スポーツをやっている人にもぜひ参加してもらいたいですね」  ウイニングイレブンでは、まさに本物の試合さながら、熱い攻防が繰り広げられ、得点を決めれば会場一体が歓喜の声で包まれる。意外にも試合を観戦する年齢層は下は学生から上は40、50代と厚い。物珍しいからか、通りすがりでふらっと見に来る人もいるそうだ。ただ、ウイニングイレブンなどのゲームタイトルを含め、eスポーツ業界は日本ではまだまだ発展途上だ。これからの業界発展に期待をにじませる。

 「ウイニングイレブンの分野では、日本の選手は非常にレベルが高いと思います。世界大会につながる予選はありますが、出場枠が1人、2人と限られており、国内の試合しかできていないのが現状です。海外だと、ユヴェントスFCがeスポーツチーム運営会社「Astralis Group」と提携しチームを立ち上げるなど、盛り上がっています。私が出場した大会では、世界大会にも出場したMayageka(まやげか)さん、元Jリーガーの武田修宏さんなど、解説陣も豪華でした。有名な人を呼び込むことで、もっと業界が盛り上がるのではと思います」

 ウイニングイレブンの競技人口はまだまだ少ない。しかし、2016年に東京ヴェルディが「eスポーツ部門」を設立したのを皮切りに、チームの数は徐々に増えてきている。また、第1回BS11CUPでベスト4に輝き、現在は吉本興業が運営するeスポーツチーム「よしもとゲーミング」に所属する日本代表のうでぃ選手、2018年のアジア競技大会で金メダルを獲得したレバ選手など、若手有望株が次々と登場しており、発展の未来が見える。

見ていて楽しい、やっていて楽しい”魅せるプレイ”を目標に

 ひとえにゲームと言っても、ウイニングイレブンは戦術、コンセプトも全て自分でメイキングできる柔軟性があり、非常に奥の深いゲームだ。橋木さんは、日頃どのような練習をして優勝にたどり着いたのだろうか。

 「友達と一緒にプレイをしながら、お互いに良い部分や改善点を言い合ったり、知らない人とオンラインで対戦するなどして、練習しています。長い時間かけて練習することはなくて、平日でも2〜3時間くらいです」

 好きなことだけど、のめり込みすぎずに一線を引く。淡々と語る口調からは、朴訥(ぼくとつ)な印象と感じる橋木選手だが、理想のプレイスタイルの話になったとき、心の内に秘めたサッカーへの情熱を感じた。

 「大会ではフォーメーションを前線で固めるなど、勝利を取りに行く戦術をとる人が多いです。それぞれやり方があると思いますが、私はバルサのように、見ていて楽しい、やっていて楽しい”魅せるプレイ”ができればと思っています。」

 スポーツは一つのエンターテイメントである。ただ「勝利する」を追うのではなく、真っ向勝負を挑むからこそ、観客は盛り上がり、会場は一体感に包まれる。橋木さんは「まだ、大学1年生なので、今のところは趣味のままでやっていこうと思っています。」と語るが、言葉の端々からは、eスポーツの業界を盛り上げ、未来を牽引するパワーのようなものを感じた。今後の活躍に期待が高まるばかりだ。

橋木選手(アックス)YouTubeチャンネル

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