伝統と挑戦 学友会体育会本部が挑戦してきたこと

伝統と挑戦 学友会体育会本部が挑戦してきたこと

明星大学 体育会本部

2019/03/31 公開

明星大学

 「学友会体育会本部」と聞いて、その特徴をすぐに言い当てるのは難しい。「学友会」には、明星大学の在学生全員が所属し、「学友会」を構成する組織として、執行委員会、体育会本部、文化会本部、星友祭実行委員会、吹奏楽団という5つの委員会が設置されている。
 「学友会体育会本部」とは、体育会に所属する約40の体育会団体をまとめる組織である。
 今回は、体育会本部会長の、経済学部3年三田昇輝さんから話を聞いた。
(※学年等の表記は取材当時のものです)

体育会本部と関わるきっかけは兄

体育会本部会長 三田昇輝さん

 三田さんは入学当初、委員会に所属することは考えていなかった。きっかけとなったのが1年次の星友祭。当時3年生で体育会本部会長であった兄のすすめで、体育会本部のブースをサポートすることになった。関わっていくうちに、自分だったらもっとこうしたいと感じる気持ちが大きくなり、大学生活という短い期間の中で充実した体験をできればと、体育会本部に入ることを決めた。
 2年次の役職は会長補佐。兄が前会長であったこともあり、様々なプレッシャーを感じる事が多かった。比較されることもあった。ようやく自分自身が評価されていると感じられたのは8ヶ月たったあとだった。役員の投票で次期会長に決まったのもちょうど同じ頃だ。

次の時代に繋がる仕組みを作り上げる

星友祭 体育会本部の出店テント

 会長になった彼は、今までの伝統を大切にすること、現状で足りていないと感じていること、次の時代に繋がる仕組みを整えて繋げていきたいということをメンバーに伝えた。仕組み作りという点で、まず取り組んだのが体育会の細則作り(必要な会議への出席を義務づけるなどを定めたルール)だ。この細則を形づくりだけで終らせないために、三田さんは各団体の部長との面談を行った。体育会は全部で40団体。毎日一人と面談できたとしても1ヶ月以上かかる。連絡の取れない団体に対しては活動場所まで出向いて面談を行った。全ての団体とじっくり話し、体育会主催行事の地域清掃がなぜ大切か、月1回の定例会やマネージャー会議などの重要性を伝えた結果、行事や会議への出席率も上がり、体育会団体同士の横のつながりも強固になった。

他の委員会との繋がり

 三田さんは体育会本部の会長だけではなく、学友会合同役員会議の議長も兼任している。合同役員会議とは、学友会の5つの委員会からそれぞれ2名ずつ参加する会議のことだ。近年は体育会本部の会長が議長を兼任した例がなかった。兼任はかなりハードだが、三田さんは、これもチャレンジして大きな成果を生み出した。体育会だけではなく、他の委員会の発展に携わることで、徐々に横の連携が生まれたのだ。今では、吹奏楽団の定期演奏会で、体育会所属の学生が、誘導や受付などのサポートを行うようになった。一見交流がなさそうな、文化会とのコミュニケーションもスムーズになった。
 三田さんは、「学友会という大きな目で見たときに、体育会だけではなく、横のつながりは大切だと感じました。学友会を最初に作った人は、学生みんながつながってほしいと思ってこの組織を作ったのではないかな、と思って創設者の気持ちを汲みたいと考えました。」と話している。

「見せ方」こだわり抜いた入学式

体育会

 体育会本部のもうひとつの見せ場は、入学式だ。体育会本部が運営を担う第2部は、在学生の演出による迫力あるパフォーマンスなど、新入生や学内からの評判が良い。三田さんはここでも、さらなる改革を行った。自身が1年生で体験した時の経験から、団体を知るための演出に工夫が必要だと感じ、体育会40団体を紹介するパフォーマンスの「見せ方」にこだわった。徹底的に各団体と協議し、リハーサルを重ね、演出の仕方を決めた結果、新入生の保護者からも高い評価を得た。

フレッシュマンキャンプ、楽しさの裏にあった徹底したリハーサル

フレッシュマンキャンプ

 話を聞く中で、もう一つ印象的だったエピソードは、体育会に所属する1年生を対象とした2泊3日のフレッシュマンキャンプだ。キャンプの目的は、体育会会員としての自覚を促し、会員同士の横の繋がりを作ってもらうことにある。ここで関係が出来ることによって、普段のコミュニケーションもスムーズに行えるからだ。
 そんなイベントの裏側には、徹底したリハーサルと努力があった。8月上旬の本番に向けて、準備は約2ヶ月前から始まる。約100名の学生を11人のメンバーで対応するため、5~10分刻みでスケジュールを組み、リハーサルを行う度に、三田さんが、メンバーに起こり得るトラブルを問い、対策を練るということを繰り返す。こうして完成した行程は全員で共有され、いつ、誰が、どこで何をしているか、いざトラブルが発生した時には各々がどのように動くべきかを把握した上で本番を迎えた。「何事も努力だと思っています。練習をたくさん行うことで、不安をなくし、一緒にやっているメンバーを成長させたい、それが成功したときの喜びにつながったと思います。」そう話す三田さんは、この活動を通して、問題を想定して対処方法を準備するリスク管理能力が上がったと感じている。

三田さんにとっての理想のリーダー像とは

インタビューにこたえる三田さん

 縦横のつながりを重視し、体育会本部だけの活動にとどまらず、学友会全体で、想いを共有したいと願っている三田さんは、多くの学生からその存在を知られている。いわば、8000人の学生代表ともいえるほどの存在感だ。
 三田さんは、体育会本部の会長になって、目線が変化したという。「個人としてではなく、組織として自分たちが今何をすべきか、感覚ではなく論理的に考えるようになりました。」そう話す三田さんに、理想のリーダー像を聞いてみると、「リーダーは、常に自ら難しい道を選択して挑戦していくもの。」という答えが返ってきた。リーダーという立場にある人間が挑戦しなければ、挑戦するメンバーは出てこない。満足してしまうと成長はないから、常に自分が先頭になって引っ張っていくことが重要だと考えている。
 これからを担う後輩に対しては、「自分は、先輩たちが築き上げてきたものを、良いところを引き継いでさらに良くしてきたつもり。でも、今のやり方が必ずしも正解ではない。上手くいったと思う点も、一歩離れたところから見ると、もっとこうしたら良いという部分があるはずだから、後輩には、もっと発展させてほしい。」とエールを送る。三田さんのことばからは、長い時空を超えて受け継がれてきたものを、しっかりと受け止めて、発展させ、次につなげようとする想いが伝わってきた。三田さんが自ら動いて、態度で示して伝えようとしたこの想いは、所属団体の垣根を越えて、全ての学生にきっと伝わるはずだ。